
– 石に命を吹き込む –
About
南部点刻職人 彫刻師
吉田 飛鳥 Yoshida Asuka
- 1981年
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岩手県盛岡市川目で生まれ育つ
Born in Kawame, Morioka City, Iwate Prefecture.
- 2003年
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祖父の代から受け継がれた石屋『川目石材』に入社(3代目)
Joined “Kawame Sekizai,”a stonemasonry company that has been passed down from my grandfather’s generation.(third generation)
- 2004年
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石に微細な点を彫っていく「影彫り」に魅せられ、独学で彫り始める
I was fascinated by “Kagebori,” the process of carving minute dots into the stone, and keep carving alone. - 2016年
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約10年かけて、点描のように石に微細な点を彫る『南部点刻』の技法を確立
Over a period of about 10 years, I established the technique of “Nanbu Tenkoku” which is the carving of minute dots in stone, like a pointillism. - 2016年~
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『南部点刻』を施した初の記念碑を制作。以降、自治体、学校等からの依頼を中心に制作を続ける
I created the first monument with the “Nanbu Tenkoku”. Since then, I have continued to produce mainly for requests from local governments, schools, etc.
History
石に刻む、ものづくりの魂――
祖父のノミが導いた職人の道
ものづくりの原点
カーン、カーンと響くノミの音。それは幼い頃から聞き慣れた、心地よいリズムでした。私の故郷、岩手県盛岡市川目地区は白御影石の産地であり、父方・母方ともに石職人だった祖父たちに囲まれて育ちました。
工場には石の粉が舞い、鼻歌交じりにノミを振るう職人たち、時には、磨いた石の上で昼寝をする人もいました。子どもながらに、そんな光景がたまらなく好きでした。そして、「いつか自分もこの仕事に携わりたい」と思っていました。
しかし、ものづくりへの憧れとは裏腹に、私は大の口下手で、自分に自信もなく…。自分には何ができるのか、それすらも分からないまま、大人になりました。
祖父から受け継いだノミ
学校を卒業後、三代目として家業を継ぎました。しかし、時代は変わり、安価な中国製品の台頭により石職人の仕事は激減していました。営業もうまくいかず、焦るばかりの日々。「このままではいけない……」
何か、自分にしかできない技術を身につけたいと考えていたある日、工場の片隅で埃をかぶった一本のノミを見つけました。それは祖父のノミでした。
祖父は「はっつぁん」と呼ばれていました。理由は、祖父がノミで石を「はつる」(削る)ことに没頭していたからだといいます。そのノミを握ったとき、私は不思議と確信しました。「このノミを使って、自分にしかできないものを作りたい」
影彫りとの出会いと挑戦
ある日、旅先で「影彫り」という技術に出会いました。石に無数の点を彫ることで、写真のような繊細な絵を浮かび上がらせる技法。その美しさに心を奪われました。
「これだ!」しかし、当時日本では影彫りをしている職人はおらず、教えてくれる人もいませんでした。私は動画や写真をひたすら調べ、試行錯誤しながら独学で技術を磨くことを決意!
作業場は、当時住んでいたアパートの押し入れ。仕事が終わった後、そこにこもって毎晩ノミを振るいました。何度やっても思い通りにならず、失敗作を積み重ねながら「どうすれば理想の作品を彫れるのか?」と問い続ける日々でした。
「時間の無駄だよ」「そんなの誰も求めてない」周囲の声もありましたが、もう気になりませんでした。風呂や布団でも失敗作を眺めながら夢中で石に向き合い続けました。彫り続けているうちに、気づけば10数年が過ぎていました。
初めての依頼と達成感
そんなある日、母校から閉校記念碑の制作依頼が舞い込みました。「今まで彫っていたものの10倍も大きな石……」プレッシャーで押し潰されそうになりましたが、「やり遂げる」という一心で3ヶ月間ひたすら彫り続けました。そして迎えた除幕式。
「すごい!」「感動する!」歓声が耳に届いた瞬間、これまでの苦労が報われ、職人として認められた気がしました。
祖父のノミを握り、影彫りと出会い、自分にしかできない技術を追求、その結果、人に喜んでもらえる作品を作ることができ、それが何よりの自信になりました。
⼀点⼀点彫り進める道のり
イベントで実演をしていると、「心が折れませんか?」と聞かれることがあります。何ヶ月もかけた作品も、失敗すれば最初からやり直し。それでも、また彫りたくなります。
石にノミを打ち込む音、手に伝わる感触。それがたまらなく好きなのです。
作品が完成し、誰かの想いを形にできたとき、心の奥底から喜びが湧き上がります。それが、私がこの道を歩み続ける理由です。
南部点刻の魅力を伝え未来へとつなぐ
今では、彫刻体験教室も開き、多くの子どもたちが石に触れ、夢中になって点を彫る姿を目にするようになりました。
「楽しい」「地味にハマる」という声が、未来へと技術をつなぐ希望になっています。
石に刻まれた一点一点の想い。それは、100年先にも残ります。私はこれからも、祖父のノミとともに、魂を刻み続けていきます。
Past works
2022年07月 | うるま市 盛岡市 友好都市提携記念碑(盛岡駅前広場) |
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2022年03月 | 繋小学校繋中学校 閉校記念碑(盛岡市) |
2021年11月 | 花蓮市盛岡市 友好都市提携記念碑(岩手公園) |
2018年03月 | 下長山小学校 閉校記念碑(雫石町) |
2016年03月 | 川目小学校 閉校記念碑(盛岡市) |